咲き揃う

うちの胡蝶蘭は母の葬儀の時に、従兄弟の名で祖母が贈ってくれた供花だ。

だから、他のどの花とも違い、見れば葬儀を連想するし、ひどく不安定であった母との関係もあって、複雑な思いが揺り起こされる花だ

「親戚に素晴らしい葬儀だったと思われたい」という祖母の見栄もあったこの胡蝶蘭は、立派な鉢に3株が寄せ植えされていた。貰ってから長いこと植え替えすることなく過ごしていたが、ちょうど七回忌を迎える頃に、母の遺品を整理したのをきっかけに、一株ずつ植え替えした。

胡蝶蘭が母への供花であったこと、水苔に陶器鉢からバークにプラ鉢に植え替えしたばかりで上手くいくか不安な思いがあることを園芸系SNSに投稿したところ、珍しくコメントが来た。

最初のコメントは、早逝した母を慮る言葉と"水苔がいいです"とのアドバイス。次のコメントは、母のことには一切触れず、"バークがいいです"という最初のコメントとは正反対のアドバイスに始まり、蘭に詳しい方らしく詳細なアドバイスが綴られたコメントだった。

二番目のコメントを読んで、心の中でストンと何かが落ちた気がした。

そうだよな、他人、ましてや顔も知らない人からしてみれば、私の母への思いなんてどーでもいいよなと。私が勝手に胡蝶蘭に複雑な思いを持ってるだけで、胡蝶蘭胡蝶蘭。単なる花なんだよなと。

そして、やっぱり水苔に陶器鉢派バークにプラ鉢はどちらも一家言あるのだなと。笑

水苔からバークに替えて何か良い変化があったかと言われると、特には変化を感じない。むしろ、初めてスリップスと思われる虫害が出て、バークにもシロアリのような虫が付いていて、初めて虫に悩まされることになった。今はおさまったが。と言っても植え替えから一年しか経っていない、変化はこれからか。

さて、そんなこんなを乗り越えて、胡蝶蘭が咲き揃った。同じ場所で育てているのだが、日の当て方にばらつきが生じたのか、花の向きに差が出て、個人的には面白かった。

ほぼ一方方向から日を当てることが出来たと思われる株は、なかなか綺麗に花が揃っている。

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カーテンの開け閉めや掃除の時の移動で、鉢を無意識に回してしまったと思われる株は、花があっちゃこっちゃ向いている。上下に花が重なっているのが分かると思う。

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今年は花の向きは不揃いだったが、寄せ鉢すれば誤魔化せる。笑

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胡蝶蘭を見ると去来する想いを完全に無くすことは出来ないが、これからも"我が家の花のひとつ"として永く付き合っていきたいものだ。